月村了衛の月録

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『白骨街道』の表紙

例の「月村作品表紙コワすぎ問題」ですが、『白骨街道』に関しては

「思ったより恐くない」「作品に合っていて良い」「とても素晴らしい」等々

ご好評を頂いておりますが、実は――

私が一押しの表紙候補写真が他にございまして、早川書房社内の皆様のご意見を伺いましたところ、

「手に取りにくい表紙は避けたい」

「ほかの頭蓋骨にくらべて肉がついている感じが生々しい」

「怖すぎる、とにかく怖すぎる」

「これだけはやめてほしい」

ともう散々な言われようでした。

新規の読者に敬遠されるような事態があっては本末転倒ですので、私も異議なく同意した次第です。(実際に使用された写真も気に入っておりまして、結果としてこれでよかったのだと思っていますが、未使用バージョンのインパクトたるや)

裏話ならぬ表紙の話でした。


現在発売中の『ビタートラップ』表紙は禍々しさのカケラもないとても洒脱なテイストですので、皆様どうかお気軽にお求めになって下さい。

よしなしごと

・ラードナー警部の本名であるマクブレイドMac(Mc)は、オフィーニーのO'などと同じくアイルランド人特有のゲール由来の家名で、「○○の子孫」を示す接頭語です。

 よく間違えられるのですが、マクブレイド(McBlade)であってマクブライド(McBride)ではありません。

 これはライザの本名を決めるとき、「現実には多くない、しかし決して不自然なものとも言いきれない」名前にしようと考えたからです。

 だから『自爆条項』で、〈墓守〉フィッツギボンズがライザの名前を聞いたとき、すぐに家系に気づくわけです。これがマクブライドなら普通の名前すぎてそうはならなかったでしょう。

 

・今頃気づいたのですが、ミステリマガジン一月号に掲載される八重ブックセンターでのトークショー採録は省かれている部分もあるようです。主に読みやすさへの考慮と紙幅の都合であろうと推測するのですが、巷間の無責任なデマを否定した部分も載せるべきであったなあと思いました。掲載前にチェックはしているので、いずれにしても私の責任です。

 

・このデマという奴は、太古から存在する人間の宿痾とでも称すべきものなのですが、昨今の世相を眺めていても、ネット社会になってから一段とその邪悪さを深めたように思います。

 そのことについてここに書こうかと思ったのですが、小説家は物語を綴るのが仕事であって、決して社会評論家ではありません。今の私にとっては、これまで通り全力を尽くして作品を書くのが最優先であると思い直した次第です。

 

 

 

ミステリマガジン2022年1月号

11/25発売のミステリマガジン2022年1月号に

過日八重洲ブックセンターで行なわれたオンライントークショーが誌上採録されることとなりました。

(追加での視聴はやはり難しいようです。申しわけありません)

 

またた明日12日夕方更新予定の早川書房のnoteでその冒頭部分が無料公開されるとのことです。

よろしければご覧下さいませ。

トークショー補遺2

53'44"あたり、

「影の助っ人が四人目、というのは執筆途中で思いついた」という意味のことを言っていますが、これは私の完全な記憶違いであることに気がつきました。

 

監修者の皆様を交えた最初の打ち合わせの際、「傭兵、元刑事、テロリストに続く職業としてスパイはどうかなと。しかしそこでCIAを持ってくるのはありきたりであまり面白くないので、元モサドがいいのではと考えている」と自分で語っていたことを唐突に思い出しました。

つまり、シェラーの加入は最初から考えていたわけです。

謹んで訂正いたします。