月村了衛の月録

小説家 月村了衛の公式ブログ        連絡先 fidenco@hotmail.co.jp 

デス・スモウ2019年

いよいよか――

土俵に上がった力士は、横目で枡席の方を見た。

その日のために設置された椅子に座ったトランプが、馬鹿のような薄笑いを浮かべてこちらを退屈そうに眺めている。

国技たる相撲の伝統からすれば、絶対にあってはならぬ光景であった。

この日のために、ワシは――

「はっけよーい……」

行司の声も、もう聞こえない。

今だ――

土俵を駆け下りた力士は、驚愕する相撲協会関係者を尻目に、トランプ目指して一直線に突進する。

長年鍛え上げた必殺の張り手ならば、トランプを一撃であの世へ送ることなど造作もない。

護衛の黒服がたちまち十人以上も立ちふさがるが、命を捨てた力士の猛進を止められるものではなく、紙屑の如くに片端から蹴散らされる。

その巨体を持て余したかのように、トランプがのろのろと立ち上がった。

逃がしはせぬ――

「お命頂戴仕るッ!」

憎き相手に繰り出された渾身の張り手。

しかし――

それを紙一重で躱したトランプは、力士とがっぷり四つに組み合ったのだ!

組んだ瞬間、力士は相手の力量を悟っていた。

つ、強い――!

屈強の関取を相手に、トランプは一歩も退かぬ。

全世界瞠目の大一番がここに始まった!

 

 

 

2019.5.16『悪の五輪』

来週の木曜、五月十六日、『悪の五輪』いよいよ刊行。

私の元にはすでに見本が届いております。

 

関連インタビューを受けた後で、「これはエルロイの手法でもあるのではないか」と気づきました。

暗黒のアメリ近現代史を扱ったジェイムズ・エルロイの諸作にも、J.F.ケネディキング牧師ハワード・ヒューズといった面々が登場し、陰謀の限りを尽くして暗躍します。

 

同様の視点から見た東京オリンピック、そこに綺麗事などあろうはずもありません。

否、美しいことなど最初からない。昔も、そして今も。

 

『悪の五輪』御期待下さい。

八重洲ブックセンターで五月三十日に催されるトークショー&サイン会もどうぞよろしくお願いします。

本と映画界の裏話、私の口がどこまで滑るか、それはお相手の春日さんの腕次第ということで。

第72回 日本推理作家協会賞 決定

第72回 日本推理作家協会賞選考会において、
下記のように決定しました。

・長編及び連作短編集部門
 葉真中 顕 『凍てつく太陽』(幻冬舎

・短編部門
 澤村 伊智「学校は死の匂い」(野性時代 2017年8月号)

・評論・研究部門
 長山 靖生『日本SF精神史【完全版】』

贈呈式は5月27日(月)午後6時より新橋の
第一ホテル東京にて行われます。

受賞様の皆様、おめでとうございました。

『悪の五輪』刊行記念トークイベント

『悪の五輪』(5月14日・講談社刊)刊行を記念して、

5月30日(木)、八重洲ブックセンター本店にて

トークショーを開催致します。

お相手は時代劇・日本映画研究家の春日太一さん。

詳細は下記をご参照下さい。

https://www.yaesu-book.co.jp/events/talk/16053/

 

イヤと言うほど濃厚な話を繰り広げるつもりですので、

どうか奮ってご参加の程を。

 

男根

骨折のリハビリをかね、足を引きずりつつ久々に書店へ。

新刊の平積みを見ていると、『男根』なる本が目に飛び込んできた。

山根明・元日本ボクシング連盟会長の著書である。

如何にもなタイトルというべきであろうが、それにしても大胆というか、思い切ったものだなあと思いつつ、別の書店を覗いてみると、書名は『男 山根』となっていた。

つまり最初の店では、帯が上にずり上がって書名の一部を隠していただけなのであった。

考えるまでもなく、社会的にアウトな書名が店頭に並ぶはずもないのだが、山根会長にはそちらの方もアリなのではと少し思った。