長らくお待たせを致しておりました『欺す衆生』、
すでに書店に並んでいるようです。
連載完結から書籍化までほぼ一年近く、
ようやく本という形でお届けできる日がやって参りました。
入魂の加筆により、いつも以上にヘヴィ級の内容となっております。
果てのない無明の世界でどうかお寛ぎのほどを。
新潮社のサイトに『欺す衆生』書影が出ました。(8月27日発売)
https://www.shinchosha.co.jp/book/339532/
何かの記事で読者の方が書いていた「月村作品の表紙コワすぎ問題」というフレーズを見かけて笑ったことがあるのですが、今回は最恐ではないでしょうか。
担当編集とデザイナー入魂の作で、どこまでも人間の本質を突き詰めた本作に相応しい表紙と言えましょう。
救いを求めながら救われぬ人間の宿業。最恐となってしまったのもむべなるかな。
覚悟を決めた上での御一読をお勧めします。
HONTOの特集企画「東京オリンピックを舞台にした小説ランキング」で、拙作『悪の五輪』が
「昭和の部」第一位
「昭和・令和総合部門」第三位
に選ばれました。
詳細はJ-CASTの記事からご覧頂けます。
https://www.j-cast.com/trend/2019/06/19360345.html?p=all
また現在発売中の「週刊現代」の〈日本一の書評〉で、
『悪の五輪』が採り上げられました。
評者は川本三郎さんです。
以下のリンクからどうぞ。
https://www.bookbang.jp/review/article/568690
採り上げて下さった皆様、ありがとうございます。
『悪の五輪』未読の方はぜひどうぞ。
私が『機龍警察』の打ち合わせで「みどライザ」と言っていたのは、単にいちいち『緑とライザ』と言っていると長いからにすぎません。(複雑な打ち合わせほど効率化が必要なのです)
ですので、CPを意味しているのではないのですが、その呼称をファンの皆さんが使っておられる用語から採ったのも確かです。
初期には「みどラド」という呼び方も見られたと記憶していて、個人的にはそちらの方がより短くて言いやすいと思ったのですが、残念ながら定着しませんでした。
ちなみに、「ミレ霧」も「霧ミレ」よりは語呂がいいという、ただそれだけの理由で私自身で命名し、打ち合わせで使っていました。
『円盤皇女ワるきゅーレ』の「秋ドラ」も私の命名で、後に合体して「最強超女アキドラ」というキャラクターになってしまいます。
「秋ドラ」の場合、
秋菜「秋ドラと呼ばないで」
ハイドラ「ハイ秋じゃ語呂が悪いぜ」
なんていう掛け合いまでやらせました。
『天地』の「ミホキヨ」も私の作で、略称を自身で使い始めたのはこれが最初です。
やすしきよしの「やすきよ」の韻を踏んで作りました。作中で「ミホキヨ」と呼ばれた清音(美星とコンビにされたくない)が「やすきよみたいでイヤだ」と言ったりします。
思えば私にとって、清音と美星とは、腐れ縁から始まって互いに真のパートナーシップを築くまでの物語でした。
『ノワール』ではこれはさらに深化徹底していて、一番最初の企画書の冒頭から、誤解の余地なく、
「霧香とミレイユは、最終的に〈魂の伴侶〉となる」
と明記しています。
(にも関わらずそれは理解されず、途轍もない苦労を強いられました。あのときの苦労に比べれば、週刊誌二本+月刊誌+αなど苦労のうちには入りません)
六月二十日より全国書店にて開催される早川書房のフェアに関連して、
昨年SFマガジンに収録されたインタビューがウェブ上に再録されました。
未読の方はこちらからどうぞ。
https://www.hayakawabooks.com/n/n179ebde4759a
(そして『機忍兵零牙』もよろしくお願いします)
いよいよか――
土俵に上がった力士は、横目で枡席の方を見た。
その日のために設置された椅子に座ったトランプが、馬鹿のような薄笑いを浮かべてこちらを退屈そうに眺めている。
国技たる相撲の伝統からすれば、絶対にあってはならぬ光景であった。
この日のために、ワシは――
「はっけよーい……」
行司の声も、もう聞こえない。
今だ――
土俵を駆け下りた力士は、驚愕する相撲協会関係者を尻目に、トランプ目指して一直線に突進する。
長年鍛え上げた必殺の張り手ならば、トランプを一撃であの世へ送ることなど造作もない。
護衛の黒服がたちまち十人以上も立ちふさがるが、命を捨てた力士の猛進を止められるものではなく、紙屑の如くに片端から蹴散らされる。
その巨体を持て余したかのように、トランプがのろのろと立ち上がった。
逃がしはせぬ――
「お命頂戴仕るッ!」
憎き相手に繰り出された渾身の張り手。
しかし――
それを紙一重で躱したトランプは、力士とがっぷり四つに組み合ったのだ!
組んだ瞬間、力士は相手の力量を悟っていた。
つ、強い――!
屈強の関取を相手に、トランプは一歩も退かぬ。
全世界瞠目の大一番がここに始まった!