昨年末くらいから私にとって思い入れの深い、御恩のある多くの方々が亡くなっている。
そのつど追悼文を書こうと思うのだが、ショックが大きすぎて手を付けられずにいるうちに、また別の方が亡くなるという繰り返しで、とうとう何も書けずに今日に至ってしまった。
とりわけジャック・ヒギンズの逝去による喪失感は大きかったが、「ミステリマガジン」から追悼文の依頼があったのでそちらに書くことにした。
個人的なことだが、拙著『脱北航路』の題名は、もちろんヒギンズの『脱出航路』に由来する。
『脱北航路』発売の数日前にヒギンズが逝くとは、こういう形で〈現実に追い抜かれる〉とは想像もしていなかった。
昨年秋に亡くなられたミステリ研究家の松坂健さんには、『狼眼殺手』執筆前にお世話になった。
ホテル・旅行業界とも縁の深かった松坂さんが、帝国ホテルの偉い人で当時関連会社の会長だった藤島滋郎さんを紹介して下さったのである。藤島さんへの取材の成果が、『狼眼殺手』クライマックスの死闘に活かされている。
その藤島さんも数年前に亡くなっておられ、痛恨の念が増すばかりである。あのときお世話になった方々には改めて御礼を申し上げたい――そう思うばかりで実行に移すことのなかった己を責める。
またプライベートでもお世話になった方が昨年末に亡くなった。この人の業績についてはいずれ稿を改めて書く。
皆様、安らかにお眠り下さい。