月村了衛の月録

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第68回江戸川乱歩賞・第一回警察小説新人賞

第68回江戸川乱歩賞の締切は一月末日、第一回警察小説新人賞の締切は二月末日です。

どちらも新しいすぐれた作品との出会いを心待ちにしております。

どうか奮ってご応募下さい。

 

乱歩賞選考委員の任期は四年(日本推理作家協会代表理事を除く)で、

私は今年で最後となります。それだけに今回どんな作品と出会えるか、楽しみでなりません。

なにやら前回の私の選評がいろいろ憶測を招いているようですが、今後の応募者のために一言。

受賞作の刊行直後に発表された杉江松恋さんの書評の中で、私の選評についても触れられておりますので、ご一読をお勧めします。

作者が楽しんで書いているのがよく分かる一作――杉江松恋の新鋭作家ハンティング『老虎残夢』 | カドブン (kadobun.jp)

杉江さんも私も、受賞作に大いにエールを贈るものです。

字数制限のため深くは触れられなかったことについて杉江さんが補足してくれています。

それは小説観に基づくものですので、異論のある方もおられるでしょうが、私達はそれぞれの信念に従い、作品を書き続けるしかありません。

 

私の作品を愛読して下さっている方のために一点だけ付言いたしますと、かの選評は過去の私の発言と矛盾するものではなく、むしろ補完するものです。

「ブーム」「ムーブメント」「トレンド」、そういった言葉は使いたくありませんが、そうしたものに安易に便乗し、消費することが、現実に存在する差別をなくすことにつながるとは限りません。むしろ逆に働くことを懸念します。

実際に、私は過去の様々な「ブーム」がそうした好ましからざる結果を引き起こした例をいくつも体験してきました。

「百合に救われた」と自ら語らざるを得なかった創作者は「本物」だと思います。

少なくとも私の感覚が痛いほどそう告げています。「本物」には心より敬意を払います。

私はその感覚に従って作品を書き、また、選考委員として作品を選考します。

私がどこまで「本物」に迫り得るか、それは果てのない長い旅ではありますが、小説を志す者は皆それを厭うものではありません。

私はそう信じています。