『東京輪舞』文庫版 小学館より四月六日発売予定。
これは日本におけるエスピオナージュとして
一つの形式を示しているのではないか――
ゲラをチェックしていて、強く思ったのがそれでした。
連載執筆中は「現代史の裏面」「昭和の闇」「公安警察の暗闘」といった事は常に考えていましたが、読み返してみると、正統なエスピオナージュとしての性格を強く感じました。
確かに公安、ことに外事課は日本のスパイ機関であるわけで、
そのクロニクルを描いた本作は、図らずも日本ならではのエスピオナージュとなっていました。
スパイの戦いを描いているのですから当然と言えば当然なのですが、執筆中は意外とそういう考えはないもので、時間が経ってみるとそうした点を強く感じた次第です。
もちろん本作はフィクション、エンタテインメントなのですが、実在の事件の背後で繰り広げられた諜報戦の苦く長い歴史を、大人の読者にぜひ味わって頂きたく存じます。