2020-09-09 戦中派不戦日記 必要があって山田風太郎の『戦中派不戦日記』を読み返しているのだが、 冒頭に近い一月三日の記述に菊池寛について評した部分がある。 「一般にいわれるほど価値なき作家にあらず。むしろ、芥川の小説よりも妖気あり。芥川の皮肉には涙あり、寛の皮肉には滑稽あり、妖気はここより発す。これ彼の人柄より出ずるものならん」 と記されており、いきなり恐るべき慧眼に接して風太郎の凄みに改めて畏怖を覚える。