月村了衛の月録

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カズオ・イシグロ

まずはノーベル文学賞おめでとうございます。

何を隠そう、私、カズオ・イシグロと直接お話ししたことがございます。
イシグロ(呼び捨てのようですみません)は数年前、早川書房副社長の仲人をつとめられまして、私はその結婚式に招待されたのでした。
藤井太洋さんや冲方丁さんは英語ペラペラですからもう積極的に話しておられましたが、
私はスワヒリ語と古代アステカ語と梵語はまあまあイケるのですが他は壊滅的にダメで、
己の非才を呪ったものです。
それでもさすがは世界のイシグロ、「歩く挙動不審」と言われる私の珍妙な英語にも
優しく対応し、握手までして下さったのでした。
そのとき冲方さんが「月村さん、一緒に写真を撮りましょう」と言うではありませんか。
もちろん私に拒む理由はありません。
そこでカズオ・イシグロを真ん中に、その左右に私と冲方さんが立ち、写真を撮ってもらいました。
しかしなんということでしょう。
そのとき撮ってくれたカメラマンは、会場のカメラマンではなく、今日に至るもどこの誰だったのか分からないのです。
冲方さんはご自分のカメラでも撮ってもらっていたので、少なくとも冲方さんはその写真を持っています。
「そのうち冲方さんにもらえばいいか」と思っていたら、なんと冲方さんがム所にお入りになるという予想外の事態に。(厳密には留置所ですが)
あれ以来冲方さんにお目に掛かる機会のないまま今日に至ってしまいました。
しかし、この世には[月村了衛カズオ・イシグロ冲方丁]が三人で写っている写真が確かに存在するのです。
……というわけで、冲方さん、ぜひあのときの写真を送って下さい。
お願いします。