月村了衛の月録

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民警

昨年上梓されました『機龍警察』では、ユーリ・オズノフ警部の経歴は元モスクワ民警と記されています。
しかし『機龍警察 自爆条項』では、元モスクワ警察となっています。


なぜかと申しますと、今年の三月からメドベージェフ大統領の主導による新警察法が施行され、警察の名称が民警(ミリツィア)から警察(ポリツィア)に変更となってしまったのです。
第一作執筆時には想像もしていなかった事態です。
単に「元○○警察」ではなく、「元モスクワ民警」というのが格好いいと思っていたのですが
(ロシアの人にとってはそんな気楽な話ではないでしょうが)、現状に合わせてやむなく表記を変えました。

現実には和平プロセスが進行中である北アイルランドの歴史を『アゲン』という設定で逆転させたくらいですから、「民警」のままでもいいかなとも思いました(「疑似イベント」というやつです)。
ロシアの警察の体質が本当に改革されるのかという質的な問題を含め、この改正法が今後どうなっていくのか、事態は以前流動的であります。
また最近の北アフリカ・中東の民主化の動きで、シリアの体制が変化したらこれもまた『自爆条項』に影響します。
この激動の時代、いちいち気にしていたら到底執筆どころではありません。


ともあれ、サラッと元モスクワ警察と書いとくぶんには、
一般的な警察の意であり、厳密にロシアの警察組織の名称を指しているわけではない、
とも読んでもらえるかなと。
そんなことを考えました。