山田風太郎先生とのただ一度の出会いを綴った拙文の（五）で、
地方の貸本屋で『飛騨忍法帖』（文庫化時『軍艦忍法帖』に改題。ややこしいことに現在はまた『飛騨忍法帖』。『魔界転生』や『柳生忍法帖』は改題の成功例だと思うが、これだけは『飛騨忍法帖』の方がいいと思う。もっとも、雑誌連載時は『飛騨幻法帖』というタイトルだったらしいが）を入手したいきさつを書いたのだが、実はこの時探していたのは『飛騨』ではなかった。
当時探していたのは水木しげるの単行本未収録作が掲載された貸本『忍法秘話』だったのだ。
青林堂発行の同誌は単行本形式の所謂貸本で、白戸三平をはじめとした執筆陣で知られる。
すでに業者が荒らして行ったあとで、抜けの相当多い『忍法秘話』を一冊ずつチェックする。
果たして、あった。
水木しげる・作『怪忍』。
これは間違いなく過去一度も単行本に収録されていない！
さらに当時入手困難でやはり長年探していた大風太郎の『飛騨忍法帖』まで発見して、この時の探索は大成功であった。
早速『怪忍』を読んでみると……
なんというか、単行本未収録も頷けるというか、まあそんな感じであった。
それでも水木しげる幻の作品掲載の『忍法秘話』は、これまた私の秘蔵の逸品となった。
……が、近年の水木ブームで、これまたいともたやすく復刻されてしまった。
世の中そんなものである。
