月村了衛の月録

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東芝COCOM事件

拙著『東京輪舞』は作者の創造によるフィクションであり文芸作品ですが、作中には実在の人物が多数登場します。当然ながら執筆に当たっては編集部と相談しながら充分に配慮致しました。

「1986 東芝COCOM違反」の章に登場する、事件の告発者・熊谷一夫さんもまさに実在の人物であり、作中記しました通り、勇気を持って内部告発された方ですが、この方について調べてみて驚いたのは、事件後「熊谷独」の筆名で作家となり、日本推理作家協会の先輩会員でもあられたことです。

そのときは確認できなかったのですが、最近になって、某出版社の方から数年前にお亡くなりになったと伺いました。(今改めて日本推理作家協会会員名簿を調べると、物故会員としても掲載されていないので、お亡くなりになる前に退会なされたのでしょう)

『東京輪舞』執筆の過程で当時の騒動に何度も思いを馳せたものですが、そのとき事件の中心にいた人物について、よもや自分が後年こうした形で触れることになろうとは、

夢にも思っておりませんでした。

今頃になって大変忸怩たるものがあるのですが、数奇な人生を歩まれた熊谷さんのご冥福を謹んでお祈り致します。

麻雀放浪記2020

無事上映されるようで大変結構なことだと思います。

なんだか東映の英断みたいな「イイ話」として語られているようで、そのこと自体に別に異論はないのですが、私には

「もうでけとるシャシンがもったいないやろが! 今劇場(コヤ)にかけんでどうするんじゃあ! 今やったら客が来るに決まっとるやんけ! クレーマーがなんぼのもんじゃ! ガタガタ文句言うて来る奴おったらなんぼでも対応したるわボケ!」

という、映画史的に申しましても大変に伝統的な東映の社風、精神に極めて忠実な対応であると思えてしまうのは、私の認識が歪んでいるせいでしょうか。 

骨折

急遽決定せし『天兆五輪百合爛漫腑衛啊』の為、長年手を付ける事さえ叶わなかった『機忍兵零牙』の修正に着手せり。

    (早川書房『世界の百合似非衛府大全』より)

元来電子版作成の為の修正であった筈が、この機に乗じて新装版刊行の運びと成りしは誠に重畳であったが、

筆者は先週自宅にて足指を骨折、誕生日の翌日たる明日より入院、全身麻酔の上手術と相成ったは如何なる不運か。

間断なく襲い来る怒濤の締切に、果たして筆者の運命は。

以上、此全て真実の近況報告也。

第72回 日本推理作家協会賞候補

第72回 日本推理作家協会賞の候補は以下の通りです。


【長編および連作短編集部門】
『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』 呉 勝浩(光文社)
『凍てつく太陽』 葉真中 顕(幻冬舎
『それまでの明日』 原 尞(早川書房
『ベルリンは晴れているか』 深緑 野分(筑摩書房
『碆霊の如き祀るもの』 三津田 信三(原書房

【短編部門】
「埋め合わせ」 芦沢 央(文藝春秋 オール讀物7月号掲載)
「イミテーション・ガールズ」 逸木 裕(KADOKAWA 小説 野性時代7月号掲載)
「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」 大倉 崇裕(東京創元社 ミステリーズ!87号掲載)
「くぎ」 佐藤 究(徳間書店 読楽5月号掲載)
「学校は死の匂い」 澤村 伊智(KADOKAWA 小説 野性時代8月号掲載)

【評論・研究部門】
『怖い女』 沖田 瑞穂(原書房
『乱歩謎解きクロニクル』 中 相作(言視舎)
『日本SF精神史【完全版】』 長山 靖生(河出書房新社
『娯楽としての炎上 ポスト・トゥルース時代のミステリ』 藤田 直哉(南雲堂)
刑事コロンボ読本』 町田 暁雄(洋泉社

選考会は4月25日(木) 午後3時より。

記者会見は同日午後6時から。
贈呈式は5月27日(月) 午後6時よりの予定。
http://www.mystery.or.jp/

『悪の五輪』

1964東京オリンピックの背後で蠢く悪の世界――
 
小説現代2019年5月号 特別編集 吉川賞特集」
にて一挙掲載。
ムック(書籍コード)での発売になります。
発売日は4月11日予定。
 
単行本『悪の五輪』
5月14日発売予定。
 
昔も今も、オリンピックにゃ悪が棲む。
 

兄貴の名言

ふと思いましたが、何かの作品を薦められて、

「機会があれば読みたい」とか言っている人は、

まず大抵は読まないし、そもそも読む気がない。

 

なぜなら! 真の読書人は!!!!!

「『読みたい』と思ったときには、すでにもう

『買ってる』からだッ!!!!!!!!!

オレたちには、本と出会う『栄光』の機会は一度きりだという『覚悟』があるッ!

そこら辺のSNSで『機会があれば』『文庫になれば』と慰め合ってるようなマンモーニとはわけが違うんだッ!

いいかッ! 真の本読みはッ!

『読みたい』と心の中で思ったならッ!

そのときスデに購入は終わっているんだッ!

だから『機会があれば』なんて言葉はねえ――ッ!!!」

          by プロシュート兄貴